この記事を書いたライター
武藤 頼胡(むとう よりこ)
一般社団法人 終活カウンセラー協会 代表理事、終活カウンセラーの生みの親。『終活』という考えを普及するべく、全国の公民館や包括センター(行政)でのセミナー講師を担い、一人一人に「終活」を伝えている。テレビ、新聞、雑誌などメディアへの掲載多数。自分自身も終活カウンセラーとして、毎月巣鴨、浅草に立ち、アンケート活動を実施したり、その年代の方からの相談ごとを聴いている。「全てのものとコミュニケーションの起きる場に」をモットーに同じ立場、同じ歩調を大切に日本の高齢者を元気にする活動に励む。
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終活って何?したいけどできない人がたくさんいます
こんにちは、一般社団法人終活カウンセラー協会の武藤頼胡(むとうよりこ)と申します。
ちなみ名前は男性と間違えられますが、女性です。
何卒宜しくお願いいたします。
「終活」って言葉は私が始めた2010年を考えると日本国中の方が「知っている」言葉になりました。
しかし、巣鴨でアンケート活動をしているのですが、その際に「終活していますか?」と尋ねると「必要だとおもうんだけどね、なかなかできないのよねぇ」とほとんどの方がおっしゃるように「していない」これが現状です。
言葉も知っている、必要と思っているのに「出来ない」。
巣鴨で「何でしていないのか?」と深く聞くと、お墓はまだ買っていないし、お葬式の見積もりを取ったり予約していないしとのこと。
そう、この終活はお葬式やお墓の準備、すなわち終焉活動というイメージなのです。
私はこの終活をこう考えます「人生の終焉を考えることを通じて自分をみつめ今をよりよく自分らしく生きる活動」です。
私たちは死ぬ準備のために生きているわけではなく、今をどうよりよく生きるのか、そのために先にある不安を元気なうちに考えましょうというのがこの終活のコンセプトです。
私もこのような仕事をしておりますが、生と死の間があるような感覚で明日も明後日も10年後も20年後もあるように思っています。
五木寛之さんの林住期(幻冬舎)の中で、『死は背後に音もなく忍び寄ってきている。そしてポンと肩を叩いて「時間ですよ」と無愛想に知らせる「前からはこない」』というものを読んだ時、ゾクッとしました。
当たり前ですが予想ができないのです。
また、一昨年お亡くなりになった樹木希林さんの新聞の手記に「人間はいつかは死ぬのではない。いつでも死ぬんです」と書いてあったのを思い出します。
残念ながらいつというのがわからない。
それでもこのことに向き合うというのはなかなか難しいことなのです。
亡くなった方から学んだこと
一昨年の5月15日に私の友人が亡くなりました。
彼はまだ当時48歳で、奥様と19歳と16歳の娘2人を遺して。
亡くなる前の日に偶然お見舞いに行きました。
命が終わるときを迎えているのがわかった、その翌朝彼は逝きました。
納棺を終え、家族と共に自宅へ行きました。
葬儀含む様々な準備をするためです。
雑然とした彼の部屋。
しかしそこには家族への想いがあふれんばかりに詰まっていました。
3台以上あるパソコンはパスワードが掛かっている。
私たちが10分くらい考えればわかる場所にちゃんと記載がありました。
そして、今までの人生をどのように生きてきたのか、何千枚にも及ぶ写真と娘への想いのある思い出の品がたくさんありました。
彼の人生にやり残しはあったのか。
若くして無念だったと思う。
娘の結婚式も孫も見たかったと思う。
未来をみたらキリはないが「今」を精一杯生きていた証がありました。
半年に及ぶ入院があったこと、これから介護状態になるかもと考えると、彼は動けるうちに様々な準備をしていたのでしょう。
それは何のために?愛する家族のためであったことは間違いありません。
人生100年時代です
この言葉はメディアや広告など様々なところで目にします。
でも実際、講演時に「100歳まで生きる準備をしていますか?」と質問するとほぼ手が上がりません。
NHKの番組内でも話しましたが、落語家の大御所師匠も「そんなに生きないよ」と仰いました。
今日本には100歳以上の方は8万人おります。
金さん銀さんが流行った27年前は4千人程度しかおらずそれから20倍も増えています。
そして日本には昭和22年~24年の第一次ベビーブームで生まれた方が多くいらしてその先輩方は2050年、100歳を迎える頃にはなんと100歳以上は54万人になるという予想値もあります。
否応なしに生きる可能性を多々秘めているのです。
その一方で長生きと聞くと良い顔をされない方ばかりの日本。
その理由は「長生きをリスク」と捉えているからです。
健康でいられるのか、お金は足りるのか、子供たちが嫌がるのでは。
心配は尽きません。
この終活は死に支度もそうですが、100年をどう楽しくより良く生きるかの「生き支度」でもあるのです。
そのためには家族と元気なうちに介護状態になったときにはどうするのかなど家族会議にいれてほしいです。
その観点から終活とは死に支度であると共に生き支度でもあります、今をよりよく自分らしく生きるが目的です。
終活の第一歩にエンディングノート
人生100年時代に突入するということを考えれば可能性はありそうですが、この長生きをリスクにするのではなく、終活をして人生をよりよくしていきたいと思います。
終活の第一歩としてお勧めしたいことをお話しします。
それはこの終活を取り掛かりやすくなる、エンディングノートについてです。
またそのエンディングノートの一番に考えてほしいことがあります。
それが「人生の棚卸し」です。
私は年間120回くらい講演を致しますが、その中で少し人生の棚卸しに触れることを入れております。
それは、「今までの人生を漢字一文字で表すと?」ということです。
これ、人生に振り返りに結構適していると思います。
どうですか?
「人生を振り返りましょう」と言われても何からしてよいのかわかりませんが、今までの人生を漢字一文字で例えるなら印象にあることがでたり、人生の総括を考えたり、人によってまとめ方は様々ですが考えやすくなると思います。
私は大学の講師をしておりますが、その教え子にエンディングノートを書く授業をしました。
何の先生かと言いますと、就職活動を支援しております。
リクルートの就活です。
それでなんでエンディングノート?と思われがちですが…
なぜ働くのか?という目的を大学生に聞くと、社会に出るからとか、社会人は働くものだからなどという言葉は違えどもこんな答えが返ってきます。
しかしこのエンディングノートに向き合い、自分にも向き合い、ということをしていくと、なぜ働くのか?の質問に対して「自分の人生のために働きます」という意図に変わります。
前回、私の含む大学生全員と人生の棚卸しを80分行いました。
そしてその感想を発表しました。
その時の男子学生の言葉が印象的でした。
「僕はぜひこの今までの人生を漢字一文字で例えるとを発表したい」とのことでした。
経済的にも環境もまわりもすべてに恵まれてきました。幼少期に水泳を習いたいというとすぐに始めさせてもらいました。友達もまわりにいて楽しかったことも多く、今も自分の好きな大学に行き、自分の就職したいところでアルバイトもしています。これだけ恵まれているのは親やまわりの方、友人のおかげたと改めて思いました。本当に感謝しています。
こんな発表でした。
もちろん生きていれば嫌なこともあっただろうし、楽しいことだけではないと思いますが、こうやっていろんな方の力だということを感じたら、これからの人生で落ち込んだり、辛くて先の見えない出来事があっても、必ず自分で立ち上がり最終的にはしっかり人生を生きる人間になるように思います。
私も今50歳ですが、生まれた時からこうだったわけではなく、いろんな人生の出来事があって今の自分が形成されたと思います。
そこを知ることはこれから歩みたい人生を考える一歩だと思っています。
最近の出来事は頭にあるのですが、お世話になった方でも最近、その方とうまくいかない関係性になるとつい「この人は…」など思ってしまう自分がいます。
それが悪いわけではなく、過去の事実もしっかりと自分というものを形成する要素になっていることを認識したいものです。
私はこの人生の棚卸しをすると「会いたい人!」がでてきます。
あんなにお世話になったのに忘れていたなど。
そしてその方に会うための壮大な計画が出来上がります。
まずは自分がすごい人となっていたいなどつい見栄を張るので、私自身が事業を成功している、充実した人生を歩んでいるなどを整えようとします。
そう考えるとこれからの人生をどう歩むかによって必要なお金も変わってくる。
そこの設計が始まります。
動機が不純かもしれませんが、動機は何でもいいと思っています。
それがこれからの人生に役立つことであれば。
そうなると稼ぐ手段を考えます。
いつまで働くのか。
このままでいいのかなど。
これだけではありませんが、こうやって実は過去を振り返ることで未来が決まることが多々あるのです。
エンディングノートのイメージは「お葬式やお墓のこと」と思っている方が大半ですが、私は毎年誕生日(実は覚えやすい1月23日です。)から書き始めて今8冊目です。
これだけ書いていると感じます、エンディングノートは死ぬためのことを書くのではなく、これからの人生を考えるための良いツールだと思います。
そのこれからを考えるために人生の棚卸しをするのです。
お葬式もお墓のことも自分の未来のこと。
死んでからのことではなく、生きた証です。
エンディングノートはカテゴリで分かれています。
介護や財産、体のこと、お葬式やお墓、遺されるものへのメッセージ。
でも実は、私が考えるエンディングノートは「過去・現在・未来」このように分かれていて、とても書きにくい、どう考えて良いのかわからないところは「未来」なのです。
いかがですか、今まで縁起でもないということで知るすべがなかったこの分野。
知識もないし何からどうやって始めればよいか、これは先輩方でも私のような若輩者でも同じです。
その道しるべとなるエンディングノートに沿って学んでいきたいと思います。
手に入れる方法としては、書店で購入、葬儀社や保険会社でも貰えます。
社会福祉協議会や包括センターでも地域によっては作成していたりします。
大学ノートでも構いませんよ!
終活に大切な10のこと
いざ終活を始めようと思っても何からしていいの?となります。
この終活に大切な10のことから始めてみてはいかがでしょうか。
- 「ありがとう」と言いたい人をリストアップする
- 年に一度健康診断に行き自分の体を知る
- 過去に住んだ場所など愛着のある土地を洗い出す
- 自分のお金、物の現状を把握する
- 家族、大切な人と1日3回以上会話する
- 自分の個性を書き出してみる
- 「今」そして「未来」の人生に必要なものを選ぶ
- お葬式、お墓は自分の未来のこと元気なうちに考える
- 毎年誕生日にエンディングノートを書く
- 生きているうちに大切な人に「ありがとう」を伝えよう
1.「ありがとう」と言いたい人をリストアップする
今までお世話になった人や親をはじめ家族の名前は浮かぶのですが、年代ごとの出来事をじっくり思い出すと「あ~こんな人たちに支えられてきた」など「ありがとう」を軸にして考えていくと、昨日立ち寄ったコンビニの定員さんにも感謝が湧いてきたり心が豊かになります
2. 年に一度健康診断に行き自分の体を知る
50歳以上は特に我慢強い年代です。
病気をしないことと病院へ行かないことはイコールではなく、健康診断は健康でいるための行事だけでなく、かかりつけ医をつくるためにも定期的にするのが良いです。
過去に住んだ場所など愛着のある土地を洗い出す
土地から自分の人生を振り返ると「もう一度行ってみたい」など未来の予定をつくることにもなります。
ここで1のありがとうを言いたい人が更に増えるかもしれません
4. 自分のお金、物の現状を把握する
頭ではわかっていてもなかなか把握できていないもの。
把握すると誰に引き継ごうかということも浮かぶかもしれません。
持ち物の多さにびっくりする人も少なくないです。
5. 家族、大切な人と1日3回以上会話する
元気に長生きを楽しむ秘訣として「社会とのつながり」が重要です。
そこでまずは親しい方との会話から始めてみてください。
6. 自分の個性を書き出してみる
自分に向き合う時間はあまり持てないのかと思います。
自分の個性をじっくり考えるとやりたことが出てきたりします。
世界に一人しかいない私なのです。
7.「今」そして「未来」の人生に必要なものを選ぶ
生前整理などどうしても何を捨てるのかということになりますが、自分のこれからの生き方を決め、その生き方に何が必要か。
という取捨選択にすると、今まで一緒にいた「もの」にも感謝が生まれ、捨てるから手放すという概念に変わりその手段さえ変わります。
8. お葬式、お墓は自分の未来のこと元気なうちに考える
死んでからのことと思われがちですが、これは自分の生きた証です。
そしてこのことは心も体も元気でないと話ができません。
ぜひ「終活してみようか」と思った今から考えてみてください。
9.毎年誕生日にエンディングノートを書く
エンディングノートは未来ノートです。
日々考えも変わったり社会も変わります。
その見直す日を自分の誕生日にすると忘れません。
一年を考えるよいきっかけにもなります
10.生きているうちに大切な人に「ありがとう」を伝えよう
死ぬときに後悔することって「大切な人にありがとうを伝えなかったこと」とのことです。
確かにいろいろあるけれど「ありがとう」は伝えたいですよね。
終活に大切な10のことの1でリストアップした「ありがとう」と伝えたい人からはじめてみては
いかがでしょうか。
まとめ
いかがでしょうか。
終活のイメージは変わりましたか。
私の年齢(50歳)なら親が元気なうちにいろんな話をしてください。
そして自分の下の世代には自分が介護状態や病気になる前にぜひご自身の話しをしてください。
その目的は、ご自身がこの長生きを楽しむためです。
終活は死に支度であるとともに生き支度でもあります、今をよりよく自分らしく生きる活動なのです。