2020年7月4日、熊本県では記録的大雨となり、球磨川などの氾濫や土砂崩れが相次ぎました。
災害から2日経った今でも、10人が行方不明となっており、44人の方が亡くなっています。
死亡者のうち、14人が熊本県にある特別養護老人ホーム「千寿園」の入居者でした。
災害時、千寿園では一体どのような避難体制がとられていたのでしょうか?
今後自然災害が起きたとき、高齢者はどのような対応を取ればいいのでしょうか?
今回はそのような点について、詳しく解説していきたいと思います。
※本ページにはPRが含まれます。
熊本県で記録的大雨!特別養護老人ホーム「千寿園」で14人が心肺停止
2020年7月4日、熊本県南部で記録的大雨となりました。
みなさんもニュースなどをご覧になったと思いますが、球磨川の氾濫をみてただ事ではないということはわかったと思います。
なんと熊本県で観測される約1ヵ月分の雨が1日で降ったそうです。
その日のうちにいつもより30倍の雨が降るってことですよね…。
それなら、あれほど球磨川が氾濫してしまっても仕方ない気がします。
今回の大雨で、多くの人の心を痛めたのは「特別養護老人ホーム千寿園で14人が心肺停止」のニュースですよね。
特別養護老人ホームは、要介護3以上の方が入居できる施設になっており、要介護度の高い人が多く入居しています。
千寿園には、50~60人ほどの高齢者が入居していましたが、救助が到着した際すでに亡くなっていた方もいたそうです。
当時の状況について迫田さんは「50人とか60人が施設にいると聞いていた。千寿園は、1階部分が完全に水がつかり、中に入れない状態だったため、窓などのハンマーで割って何とか中に入っていった」と話しました。
そのうえで「水かさがだいぶあって、何人かはすでに亡くなっているような状態でした。ほかの人たちは2階にいて、救助しましたが、施設内はめちゃめちゃな状況でした」と話していました。
引用元 NHK NEWS WEB:高齢者施設「千寿園」 救助にあたった男性が見た当時の状況
特別養護老人ホーム千寿園での災害対策はどうなっているのか?
今回の大雨を始め、自然災害は防ぎようがありません。
ですので、事前にしっかりとした対策をたてておかなければいけないのです。
熊本県にある特別養護老人ホーム「千寿園」では、どのような災害対策が練られていたのでしょうか?
年に2回の避難訓練が義務付けられている!
特別養護老人ホーム「千寿園」に限った話ではありませんが、老人ホームなどの介護施設では年に2回の避難訓練が義務付けられています。
施設によって避難訓練の仕方は違いますが、地域住民と協力して行うところもあり、大掛かりな訓練となることも多いでしょう。
しかし、「こうした避難訓練は実際に災害が起きた時に有効なのか?」といった疑問の声もあがっています。
高齢者には難聴の方が多く、緊急時のサイレンや放送が聞こえないこともあります。
認知症の方だったら、何が起きているのかすぐに理解できず、避難が遅れてしまうことも少なくありません。
そういった入居者には、施設スタッフが一人一人に声を掛け、確実な避難誘導が必要となります。
さらに、車イスの方は、施設スタッフが避難できるところまで押さなければいけません。
寝たきりの方も同様で、車イスに急いで移乗させたり、もっと身体状況が深刻な場合はストレッチャーで移動したりしなければいけないこともあります。
こうした避難の作業を、災害時にスムーズにできるかといったら、やはり困難なのが現実でしょう。
今回のような大雨の場合、氾濫した川の水が迫り着て一刻を争うこととなります。
自然災害の避難は時間との勝負となりますから、限られたスタッフの数で入居者全員を無事に避難させることができるかというと厳しいかもしれませんね。
特に、今回の球磨川の氾濫は午前4:50頃に発生しました。
特別養護老人ホーム「千寿園」は、夜間体制ということもあり、勤務していたスタッフは2人でした。
入居者の人数にもよりますが、特別養護老人ホームを始めとする他の介護施設でも、夜間はこれくらいの人員配置となっていることが多いでしょう。
寝ている入居者を起こしスムーズな避難を行うには、施設スタッフが2人だとより厳しいですよね。
特別養護老人ホームに入居していない方はどこへ避難すればいいの?
特別養護老人ホームなどの老人ホームに入居していれば、施設スタッフが誘導してくれるので、災害時でも避難先に悩むことはありません。
一般的に、近隣の学校や公民館などが避難所として設定されています。
そのような避難所を一次避難所といいます。
しかし、介護を要する高齢者の場合、一次避難所に避難してもその後の生活が苦しくなってしまいます。
そのような方は、自然災害が起きたときどこに避難すればいいのでしょうか?
介護を要する高齢者は福祉避難所へ!
介護を要する方は、福祉避難所へ逃げることをオススメします。
福祉避難所とは、要介護者だけでなく、妊産婦や乳幼児、障害者などを対象として設置されている避難所です。
対象となる方は、災害救助法において「避難所の生活において、特別な配慮を要する者」と規定されているので確認しておきましょう。
一点注意していただきたいのは、「特別養護老人ホーム又は老人短期入所施設などの入所対象者」は福祉避難所の対象者とされていないということです。
「緊急入所を含め、当該施設で適切に対応されるべき」とされているからです。
福祉避難所の場所を把握しておこう!
自然災害には、備えが大切です。
ですので、福祉避難所の場所を事前に把握しておくようにしましょう。
NPO法人兵庫障害者センターが行った調査によると、住んでいる自治体の福祉避難所の場所を把握している人はたったの23%ほどでした。
福祉避難所を指定している自治体も約45%で、周知活動をしている自治体も約67%と半分ほどしかいないのも要因でしょう。
こうした事実がある中、自分や親の身を守るために、自ら調べておくことも大切なのです。
自治体のホームページをみれば、福祉避難所を公開しているところがほとんどですので、事前に確認しておきましょう。
ここでは、今回の記事で取り上げている熊本県の福祉避難所の一覧を紹介しておきます。
参考 熊本県:福祉避難所一覧
災害時に特別養護老人ホームにいるのが不安なら在宅介護を利用しよう!
特別養護老人ホームは、公的施設で費用も安く質の高いサービスが受けられるということで人気の施設です。
しかし、今回起きた災害時の千寿園でのニュースをみてしまうと、「老人ホームに入居するほうが危険なのでは…?」と思う方もいますよね。
そのような方は、自宅で要介護者を介護することなると思いますが、在宅介護はとても大変です。
在宅介護はストレスを感じやすく、介護者が限界に到達し共倒れしてしまうなんて話もよく聞きます。
せっかく災害に備えて在宅介護にしているのに、災害でないときに心身が限界を感じてしまったら意味がないですよね。
ですので、自宅での介護を考えている人は、在宅介護サービスを利用することをオススメします。
在宅介護サービスには、訪問介護や訪問看護、訪問入浴介護など、日常生活に欠かせない介助が多く揃っています。
利用者の身体状況に合わせて、必要な在宅介護サービスを利用するようにしましょう。
在宅介護サービスについては、以下の記事で詳しく説明していますので、ぜひ一度読んでみてください!
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
熊本県にある特別養護老人ホーム「千寿園」のニュースについては、理解していただけたでしょうか?
自然災害とはいつ起きるかわかりません。
事前に災害が起きたときのことを考えておき、その時の対応を家族間でも共有しておくようにしましょう。
その際は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
また、今回の災害に巻き込まれ命を落としてしまった方には謹んでお悔やみ申し上げます。