高齢者の健康

【理学療法士が解説!】ロコモティブシンドロームの原因と概要について

ロコモティブシンドローム 原因-膝を抑える杖をもったシニア男性 高齢者の健康

ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)という言葉をご存知でしょうか。

ロコモは、自分の脚で移動することが困難になってしまい寝たきりになってしまう危険がある状態をいいます。

高齢者の健康寿命を延伸させるためには、このロコモを予防していくことは非常に重要なポイントです。

今回はロコモについて、原因や診断基準、対策方法などについて紹介していきます。

この記事を書いたライター
rana様rana
理学療法士として12年目。
これまで総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科で働きながら、訪問看護ステーションにて非常勤勤務を兼務。腰痛や膝痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。
本業をこなす傍ら、webライターとしても活動し、健康、医療分野を中心にこれまで多数の記事を執筆中。

※本ページにはPRが含まれます。

ロコモティブシンドロームとは?

ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)は2007年に日本整形外科学会が提唱した、運動器の障害により移動機能の低下をきたした状態をいいます。

わかりやすくいうと、足腰が弱って歩行、立ち上がりなどに支障が出始めた状態で、そう遠くない将来に歩けなくなったり、介護や介助が必要になっていたり、そうなったりする危険性が高い状態のことで、厳密には病名ではありません。

ロコモは日本語名では「運動器症候群」といいます。

運動器とは体を動かすために関係する組織や器官のことで、骨、筋肉、関節、靭帯、腱、神経などから構成されているものをいい、ロコモにはこの運動器の障害が大きく関与しているのです。

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ロコモティブシンドロームの原因

ロコモの原因には以下のことが考えられています。

筋力低下

年齢を重ねると、若い時と比べて筋肉量や筋力はどうしても低下してしまいます。

それが引き金で運動する機会が減ることで、さらに筋力が低下してしまうという負のスパイラルに陥ってしまいます。

すると歩いたり、立ったり座ったりする移動能力が低下してきてしまうのがロコモの原因となるのです。

バランス能力の低下

バランス能力とは筋力や柔軟性、感覚、反射神経など様々な要素から成り立っています。

それらの要素が衰えてくると、バランスを崩して転倒したり、階段の上り下りができなくなったりしてしまいます。

そのようなバランス能力の低下もロコモの原因となるのです。

運動器の疾患

骨や筋肉といった運動器の病気によって移動機能が低下することもロコモの原因となります。

特に以下に挙げる3つの疾患はロコモの原因の3大疾患といわれています。

【骨粗鬆症】

骨粗鬆症とは、加齢や生活習慣、各種疾患が原因で骨の量が少なくなり骨折しやすくなる病気をいいます。

人の骨は、古くなった骨は破壊・吸収され、その分新しい骨が形成されるのを常に繰り返しており、これを「骨のリモデリング」と呼んでいます。

この「骨吸収」と「骨形成」のバランスが保たれていれば、骨の量は一定に保たれるのですが、骨粗鬆症の場合は骨吸収が骨形成を上回ってしまうため、生じてしまうのです。

骨粗鬆症になると、ちょっと転倒しただけでも外力骨折しやすくなり、移動能力に大きな支障をきたしてしまいます。

特にロコモに関係する、高齢者に多くみられる骨折は、背骨の圧迫骨折、大腿骨骨折が挙げられます。

【変形性膝関節症】

変形性膝関節症は、膝にある軟骨が擦り減ってしまい、変形をきたすことで痛みや可動域制限をきたしてしまう疾患です。

レントゲンでみてみると、大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)の隙間が狭くなっていることがわかります。

変形性膝関節症はその進行度によって3期に分けられます。

初期症状

初期のころは、立ち上がりや歩き始めなど、動作の始めだけに痛みが生じますが、動きつづけたり、休んだりすることで症状は落ち着きます。

なんとなく膝がこわばる、違和感があるという程度なので、生活の支障もさほど出ないことが多いでしょう。

中期症状

初期のころに休めば治っていた痛みが、なかなか消えなくなってきます。

歩くたびに痛みが出たり、階段の登り下りができなくなったりして生活に支障が出てくることが多いでしょう。

また膝の可動域制限もみられるようになり、正座やしゃがみこみといった動作もできないことがあります。

また関節が腫れたり、水が溜まってまったりすることもあります。

末期症状

レントゲンで、膝の軟骨がほとんどなくなってしまうことが確認され、骨同士がくっついているように見えます。

自力で歩くことが困難で、生活に大きな支障をきたします。

医師からは人工関節の手術をした方が良いと勧められることも多いでしょう。

【脊柱管狭窄症】

背骨の後ろにある神経の通り道である「脊柱管」というトンネルが狭くなることで生じる疾患です。

脊柱管の中にある脊髄神経が圧迫を受けることで、下半身に痺れや痛みが生じたり、長い距離を歩けなくなってしまう症状(間欠性跛行:かんけつせいはこう)がみられたりします。

脊柱管狭窄症は、前屈みで歩くと症状が軽減されることがあります。

これは、脊柱管は前屈みになることで、狭窄している部分が広がるという特徴が要因です。

症状が進行すると、排尿障害(尿もれや尿排出困難)や排便障害、下半身の筋力低下がみられます。

場合によっては手術が必要になることもあるでしょう。

ロコモティブシンドロームの診断基準

ロコモティブシンドローム 原因-手すりを掴んで階段を登るシニア女性

ロコモかどうかは、簡易的な質問方法のロコチェックと、運動によって評価するロコモテストによって判定されます。

それぞれについて内容と、結果の判定方法についてみていきましょう。

ロコチェック

簡単な7つの質問のうち、ひとつでも当てはまれば運動器が衰えているサインであり、ロコモである可能性が高いと判定されます。

質問は次の7つとなっています。

  1.  片脚立ちで靴下が履けない
  2.  家の中でつまずいたり、滑ったりする
  3.  階段を登るのに手すりが必要である
  4.  家のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)
  5.  2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
  6.  15分くらい続けて歩くことができない
  7.  横断歩道を青信号で渡りきれない

ロコモ度テスト

ロコモがどうかを調べるテストがロコモテストです。ロコモ度テストは1〜3まであり、ひとつでも該当する場合はロコモであると判定されます。

<ロコモ度テスト1:立ち上がりテスト>

立ち上がりテストでは脚の筋力を測定します。

10~40cmの台から片脚、または両脚で立ち上がれるかどうかで程度を判断します。

【方法】

両脚の場合
まずは40cmの台に両手を組んで座ります。
両脚は肩幅に広げて、反動をつけずに立ち上がりそのまま3秒キープします。
①ができたら片脚で行います。
40cmの台から左右どちらかの脚を浮かせた状態で、反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒間姿勢を保持します。
②ができた場合→
30cm、20cm、10cmと、10cmずつ低い台にうつり、片脚で立ち上がりを行っていきます。左右ともに片脚で立ち上がれた一番低い台がテスト結果です。
②ができなかった場合→
30cmから始め10cmずつ低い台にうつります。両脚での立ち上がりをテストします。両脚で立ち上がりを行い、立ち上がれた一番低い台がテスト結果です。

【結果判定】

ロコモ度1 どちらか一方の脚で40cmの台から立ち上がれない
両脚で20cmの台から立ち上がれる移動機能の低下が始まっている段階です。
ロコモ予備軍といえるでしょう。
ロコモ度2 両脚で20cmの台から立ち上がれないが、30cmの台から立ち上がれる
移動機能の低下が進行している状態です。ロコモにならないよう、運動を始めるか、整形外科の受診をオススメします
ロコモ度3 両脚で30cmの台から立ち上がれない
移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態です。なんらかの運動器疾患の治療が必要な可能性が高いので、整形外科にて医師の診断を受けた方が良いでしょう。

<ロコモ度テスト2:2ステップテスト>

このテストでは歩幅を測定します。歩幅測定することで脚の筋力、バランス能力、柔軟性などを含めた歩行能力を総合的に評価することが可能となっています。

【方法】

スタートラインを引き、両足のつま先を揃えます。
可能な限り大股で2歩歩き、両足を揃えます。(バランスを崩した場合は失敗となり、もう一度やり直します)
2歩分の歩幅を測定します。(最初に立ったラインから着地点のつま先まで)を測定します。
2回行って良かった方の記録を採用します。
次の計算式で2ステップ値を算出します。

2歩幅(cm)身長(cm)=2ステップ値

【結果判定】

ロコモ度1 2ステップ値が1.1以上1.3未満
移動機能の低下が始まっている段階です。ロコモ予備軍といえるでしょう。
ロコモ度2 2ステップ値が0.9以上1.1未満
移動機能の低下が進行している状態です。
ロコモにならないよう、運動を始めるか、整形外科の受診をオススメします
ロコモ度3 2ステップ値が0.9未満
なんらかの運動器疾患の治療が必要な可能性が高いので、整形外科にて医師の診断を受けた方が良いでしょう。

<ロコモ度テスト3:ロコモ25>

普段の生活で困難なことや痛みについての25項目の質問紙に答えていくテストです。
各質問の点数の合計結果によってロコモ度を判定します。

ロコモ度1 点数が7点以上・16点未満
移動機能の低下が始まっている段階です。ロコモ予備軍といえるでしょう。
ロコモ度2 点数が16点以上・24点未満
移動機能の低下が進行している状態です。
ロコモにならないよう、運動を始めるか、整形外科の受診をオススメします
ロコモ度3 点数が24点以上
なんらかの運動器疾患の治療が必要な可能性が高いので、整形外科にて医師の診断を受けた方が良いでしょう。

ロコモの予防対策

ロコモを予防するためには、普段の生活から運動をする習慣をつけることが重要です。

運動といってもいきなりジムで鍛えたり、長距離のランニングをしたりするわけではなく、日常生活の中に取り入れられる内容の方が良いでしょう。

例を挙げると

  •  買い物や通勤の際に普段よりも遠回りをして歩くようにする
  •  エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使用する
  •  ラジオ体操をする

などがオススメです。

また「ロコトレ」と呼ばれているロコモ予防トレーニングを行うのも良いでしょう

【スクワット】

肩幅に脚を広げて立ち、膝を曲げて下半身の筋肉を鍛えるエクササイズです。

膝がつま先から出ないように、また膝がつま先に対して内側や外側に向かないようにしてお尻を後ろに引きながら膝を曲げていきます。

【片脚立ち】

片脚立ちをして体を支えることで、下半身の筋肉を鍛えるエクササイズです。

バランスを崩してしまう場合は何かにつかまりながら行いましょう。

上半身を真っ直ぐにして、支えている脚の真上に頭が来るようにするのがポイントです。

まとめ

今後、高齢化が進んでいくにあたり、自分の脚で歩いて移動することは、健康寿命を延伸させるために重要なポイントとなります。

ロコモは、自分でも気が付かないうちに進行してしまうことも多いので、早期に発見して、適切な治療、対策を行っていくことが理想的です。

今回はロコモの概要と原因、予防対策について紹介してきましたので是非参考にしてみて下さい。

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