「介護が必要となっても住み慣れた地域で生活したい…」と思う人は多いのではないでしょうか?
近年では、医療サービスや介護サービスが連携をし、高齢者が住みやすい地域を作るための支援が行われています。
この支援を、「地域包括ケアシステム」といいます。
全国の市区町村が実施しており、それぞれの地域に適した地域包括ケアシステムの構築をしています。
そこで今回は、地域包括ケアシステムについて徹底解説していきたいと思います!
メリットやケアシステムの必要性なども解説していくので、ぜひ最後まで読んでみてください!
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地域包括ケアシステムとは?
地域包括ケアシステムとは、要介護者が重度な状態となったとしても、住み慣れた地域で最期まで暮らすことができるよう、医療や介護などを提供できるようにするシステムです。
2025年問題という言葉を聞いたことはありますか?
2025年問題とは、2025年には4人に1人が75歳以上となり、医療や介護などのニーズが急増すると言われている問題です。
地域包括ケアシステムは、その2025年を目処に構築することになっています。
「住み慣れた地域で最期まで」をテーマにしているため、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて、構築していくことが大切です。
地域包括ケアシステムは、市町村が中心となって作り上げられているのです。
地域包括ケアシステムの必要性
先ほど、2025年問題について説明をしました。
では、高齢者が増えることで具体的にどのような問題が起きるのでしょうか?
高齢者の人口増加が進むと、従来の社会保障が成り立たなくなってしまうのです。
実は、2012年の時点で1人の65歳以上に対して、2.4人の20歳~64歳が支える仕組みとなっていたのです。
このまま少子高齢化が進んでしまえば、若者の負担が大きくなるのは見に見えてますよね。
なんと、2050年には1人の65歳以上に対して、1.2人の20歳~64歳が支えなければいけなくなるのです。
介護保険制度だけでも、必要とする高齢者は年々増加傾向にあり、今後も増加することが見込まれています。
そこで誕生したのが、地域包括ケアシステムです。
このような状況でも、高齢者が維持したいと願う生活を保障し、自立した生活を継続させるには、地域で協力し、包括的に支援・サービス提供体制を構築する必要が生じたからです。
地域包括ケアシステムはどのようなことに取り組んでいるのか
地域包括ケアシステムを構築するにあたって、重要な構成要素は5つあります。
- 住まい
- 生活支援・福祉サービス
- 介護
- 医療
- 予防
住み慣れた地域で最期まで暮らすには、必要な住まいが整備される必要があります。
また、地域での生活を継続するには、生活支援・福祉サービスの提供も必要となってきます。
これらの日常生活を支える構成要素が保障され、介護・医療・予防といった専門的なサービスが、利用者本人の希望に沿って適確に提供されなければいけません。
地域では、高齢者の生活に必要な機能やサービスがお互いに連携を取り、高齢者を支える仕組みが構築されています。
この地域包括ケアシステムで指す「地域」とは、30分程度あれば移動することができる範囲とされています。
地域包括ケアシステムの4つのポイント
これまでの社会福祉は、以下の4つのポイントを組み合わせ行われてきました。
- 自助
- 互助
- 共助
- 公助
自助
自助とは、自分で自分を助けることです。
自立した生活を継続するために必要なサービスを、実費で購入しているということです。
たとえば、主治医に定期的な健康診断をお願いして、自身の健康管理を行っているなどです。
互助
互助とは、住民同士が助け合うことです。
町会・自治体などでの活動やボランティア、公的な制度ではない助け合いの仕組みのことです。
共助
共助とは、制度化された助け合いの仕組みのことです。
医療・年金・介護保険といった社会保険制度を指し、公的制度の仕組みをもって社会全体で助け合っていくものです。
公助
公助とは、国による社会福祉制度のことです。
生活保護制度や市区町村が実施している高齢者福祉事業のことを指します。
地域包括ケア強化法の施行
先ほど説明した5つの要素をさらなる実現につなげるため、2018年に地域包括ケア強化法が施行されました。
この法律の施行に伴い、高齢者にとって重要ないくつかの法律が改正されました。
改正での主なポイントは以下の3つです。
- 自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化などの取組み推進
- 医療・介護の連携の推進
- 地域共生社会の実現に向けた取組みの推進
①自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化などの取組み推進
国から提供されたデータを分析の上、介護保険事業計画を決定したり、財政的インセンティブの規定を整備したりしています。
財政的インセンティブとは、市町村が自立支援などを強化した場合の報奨金の付与などのことです。
②医療・介護の連携の推進
日常的な医療ケアや看取りなどの機能と、生活施設としての機能を兼ね揃えた、新たな介護保険施設などが創設されました。
また、医療と介護の連携に必要な情報も、都道府県によって市町村に提供されるよう整備されました。
③地域共生社会の実現に向けた取組みの推進
有料老人ホームへの入居者保護のための施策を強化するなどのことが挙げられます。
また、介護保険と障害者福祉制度を同時に利用できる共生型サービスも創設されています。
地域包括ケアシステムのメリット
地域包括ケアシステムを実現させることで、多くのメリットがあります。
では、そのメリットをみていきましょう。
- 医療ケアを受けながら自宅で暮らせる
- 認知症の方やご家族が生活しやすい
- 多種多様なサービスが生まれる
- 高齢者の社会活動参加に活発になる
医療ケアを受けながら自宅で暮らせる
以前は、医療サービスと介護サービスを提供する事業者が連携しておらず、どちらも必要な場合はそれぞれの分野にサービスを提供してもらうしかありませんでした。
そのため、柔軟なサービス提供が難しかったのです。
しかし、地域包括ケアシステムが実施されたことにより、在宅医療サービスと介護サービスがしっかりと連携を行い、必要なタイミングで適切なサービスを受けられるようになりました。
医療ケアが必要な重介護者でも、自宅で暮らしやすくなったのです。
認知症の方やご家族が生活しやすい
地域支援ネットワークを生かすことで、地域に認知症カフェや認知症サポーターはどんどん増えていくでしょう。
認知症サポーターとは、認知症に関して豊富な知識をもち、認知症やご家族のことを支援する人のことです。
認知症のことを理解する人が増えるだけで、認知症やそのご家族の暮らしやすさはぐんと上がります。
いままでは、認知症だと施設に入ることを勧められることが多かったですが、認知症の方を支える体制が整うだけで、住み慣れた自宅で生活することが可能になってくるからです。
また、2018年から「認知症初期集中支援チーム」が地域包括支援センターから設置されるようになりました。
そのため、認知症の疑いをもった方や初期症状の方も、医療サービスと介護サービスに結びつけ、十分にサポートできるようになりました。
多種多様なサービスが生まれる
地域包括ケアシステムの導入で、高齢者が自宅で自立した生活を送るにあたって必要なサービスを適確に提供できるようになりました。
必要としているサービスは人それぞれですよね。
介護サービスを細かく提供できるようになったおかげで、ニーズにあったサービスを利用することができます。
買い物・食事・掃除などの生活支援から、介護予防への取り組み、さらに近年では24時間対応の定期巡回・随時対応サービスの提供も始まりました。
高齢者の社会活動参加が活発になる
地域包括ケアシステムでは、比較的元気な高齢者は、支援を必要としている高齢者を支える側に回ることが期待されています。
支援するという役割を果たすことで生きがいに繋がり、介護予防にもなります。
介護サービスを受けられるだけでなく、活躍の場を広げられるという点も、地域包括ケアシステムのメリットでもあります。
地域包括ケアシステムはどのように運営されているのか
地域包括ケアシステムは、地域包括支援センターなどが主催する地域ケア会議によって実施されています。
地域ケア会議の具体的な機能としては、以下の5つがあげられます。
- 自立支援に役立つケアマネジメントの支援
- 事業者との連携・地域包括支援ネットワークの構築
- ケア提供者の質やニーズなどの課題発見
- 課題解決方法の確立
- 課題解決方法の国・都道府県への提案
以上の機能は、それぞれが独立しているわけでなく、各機能が連携しあって、介護事業計画として実行されることで、地域包括ケアシステムとしての実現となるのです。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
地域包括ケアシステムのメリットについては理解していただけたでしょうか?
高齢者に焦点をあて説明してきましたが、地域包括ケアシステムはその地域に住むすべての人にとっての包括的なケアのしくみです。
全国共通の内容でなく、それぞれの地域の特色が必要となってくるケアシステムです。
そのためには、他人事とは思わず、地域全体で協力していく必要があります。
高齢者の方まで住みやすいまちづくりを目標に、地域包括ケアシステムを構築していきましょう!