アパシーとは、日常生活の中で意欲がなくなり、自分で何かをすることが苦手になっていく症状です。
高齢者にアパシーの症状がでることもあり、介護をする方にとっては知っておくべきことのひとつです。
目に見えて現れる症状ではないので、介護をしているご家族でも発見が遅れてしまうこともあります。
しかし、ご家族が寄り添って接してあげることで、症状の緩和をすることができるのです。
そこで今回は、アパシーについて詳しく解説していきたいと思います!
うつ病との違いや対処方法なども説明していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください!
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高齢者のアパシーとは?
アパシーとは、周囲への関心だけでなく、自分自身のことでさえやる気を失ってしまい、身の回りのことですら無気力で何もやる気が起きない状態のことです。
「無為・無反応」といった意味で、もともとは社会学で使われていた言葉でした。
高齢者にアパシーの症状が見られると、これまでの毎日の習慣が崩れ、健康面や衛生面に対してものぐささが目立つようになります。
特に高齢者の一人暮らしや高齢夫婦だと、周囲の目が行き届きにくいです。
子どもたちが久々に家を訪ねてみたら、脱いだ服が散乱していたり、掃除ができていなかったりしたら、アパシーの可能性は高いといえるでしょう。
アパシーとうつ病はどう違うの?
アパシーの症状だけ聞いていると、「うつ病」との違いがよくわかりませんよね。
たしかに、アパシーとうつ病はよく間違えられます。
しかし、アパシーは「○○したい!」といった意思低下が特徴です。
自分に対して否定的になるうつ病とは、いくつか違う点があります。
アパシーとうつ病の違いを詳しくみていきましょう。
- 気分
- 症状の自覚
- 危険行為
- 薬による治療
気分
うつ病は、常に気持ちが落ち込み暗くなってしまいます。
否定的な考えになり、自分はダメな人間なんだと錯覚してしまうことが特徴です。
しかしアパシーは、気分が落ち込むようなことはありません。
さらに言えば、意欲的になることもないのです。
何事にも関心がなく、常にフラットな状態が続きます。
症状の自覚
うつ病の方は、自身がうつ病であることを自覚しています。
そのため、周りの人に相談したり、通院して病状を改善しようと努めます。
しかし努力しても改善が見られない場合は、自身の無力さに焦りや不安、苛立ちを覚え、より症状が悪化してしまうといった、負のスパイラルが待ち構えているのです。
一方でアパシーは、自覚症状に乏しいため、通院したり相談したりなど、改善するための努力が見られません。
危険行為
うつ病が進行していくと、自傷行為に走るケースがあります。
苛立ちから、周りの人への暴力行為に発展してしまうこともあるでしょう。
しかしアパシーの場合は、自傷行為があらわれることは非常に少なく、他者に暴力的になることもありません。
薬による治療
うつ病には、抗うつ剤が有効とされていて、実際に多くのうつ病患者がこの薬を服用しています。
しかしアパシーでは、有効な薬が明確化されていなく、まだ研究段階にあります。
抗うつ剤を用いても効果は得られないため、カウンセリングなどの精神療法がメインになるでしょう。
【うつ病とアパシーの違い】
うつ状態 | アパシー | |
---|---|---|
基盤にある病態 | 機能性、心因、環境因 | 器質性、慢性脳障害、全身衰弱 |
症状 | 悲哀感、喜びの喪失、精神運動抑制、焦燥感 | 意欲低下、無関心 |
認知症との関連 | 合併することはあるが、典型的症状を示さないことが多い | 認知症・フレイルにともなう精神症状のひとつである |
評価法 | GDS,CES-Dなど | やる気スコア、意欲の指標 |
治療法 | 抗うつ剤、急性期は精神的安静 | 脳賦活剤、作業療法などの非薬物的アプローチ |
高齢者がアパシーになったら正しい生活習慣を促そう!
もし、同居している高齢の親などにアパシーの症状が見られる場合、ご家族はどのように接すればいいのでしょうか?
前述したように、アパシーには十分な効果が得られる薬は開発されていません。
しかし、ご家族が正しく接してあげることで意欲を促進させ、症状を和らげることができるのです。
正しい接し方というのはとても単純で、規則正しい生活習慣に直してあげることが大切です。
起床・食事・就寝の時間を決め、その決まった時間に声をかえてあげるようにしましょう。
自分で行えることはなるべく自身でやってもらって、自発的に身体を動かすことを促してあげるのもいいかもしれませんね。
高齢者がデイサービスなどを利用している場合は、送迎車に乗るギリギリまで付き添ってあげ優しく声をかけるなど、ご本人のモチベーションが下がらないようにサポートしてあげましょう。
かかりつけ医とも相談しながら、正しい声かけを行うことが大切です。
介護疲れによってご家族がアパシーになることも…
アパシーの症状が見られるのは、高齢者だけではありません。
高齢者を介護をしているご家族が、アパシーになってしまうこともあります。
毎日一生懸命介護をしているのに、症状がよくならなかったり、介護を受け入れてもらえなかったりすると、それはストレスに繋がります。
ストレスや不安を打ち明ける人がいないと介護に限界を感じてしまい、「なんのために頑張っているのだろう?」と虚無感を覚えてしまうため、アパシーになってしまうのです。
また、介護していた親などが亡くなり、喪失感や今までの疲れが一気に募り、アパシーの症状が見られ始めることもあります。
介護をしているご家族にアパシーの症状がみられるようでは、高齢者の安全面や健康面にも影響が出てしまいます。
少しでも介護に疲れを感じたら、自分の時間を作るなどしてリフレッシュすることが大切です。
まとめ∼高齢者のアパシーとは∼
最後まで読んでいただきありがとうございます。
高齢者のアパシーについては理解していただけたでしょうか?
意欲の低下がみられるため、心身ともに豊かな生活を送ることは難しくなってしまうかもしれませんね。
しかし、ご家族の協力があれば症状を緩和することができますので、今回の記事を参考にして正しくケアしてあげるようにしましょう。
また、血管性認知症を患うことで、アパシーの症状が目立つこともあります。
認知症予防をすることも、アパシーの予防に繋がるかもしれませんね。