介護を必要とする高齢者が増えると同時に、高齢者虐待の問題が深刻化してきています。
高齢者虐待はご家族内だけではなく、施設などで起きているのも特徴です。
高齢者虐待は何としてでも未然に防がなければいけない問題ではありますが、そもそもなぜ高齢者虐待が起きてしまうのでしょうか?
未然に防いだり、対策を立てたりするのにも、原因を解明しなくてはいけませんよね。
そこで今回は、高齢者虐待について徹底解説していきたいと思います!
高齢者虐待の種類や未然に防ぐ方法なども紹介しますので、ぜひ最後まで読んでみてください!
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高齢者虐待の種類
高齢者虐待とひとくくりに言っても、様々な種類があります。
具体的な虐待の内容で、種類は分けられています。
主な高齢者虐待の種類は以下の通りです。
身体的虐待 | 暴力的行為によって身体に傷やアザ、痛みを与える行為や外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為 |
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心理的虐待 | 脅しや侮辱などの言葉や態度、無視、嫌がらせ等によって精神的に苦痛を与えること |
性的虐待 | 本人が同意していない、性的な行為やその強要 |
経済的虐待 | 本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人が希望する金銭の使用を理由なく制限すること |
介護・世話の放棄・放任 | 必要な介護サービスの利用を妨げる、世話をしない等により、高齢者の生活環境や身体的・精神的状態を悪化させること |
引用元 東京都福祉保健局:虐待の主な種類
高齢者虐待の程度
高齢者虐待は、状況の程度によって3つのレベルに分けて考えられています。
緊急事態 | 高齢者の生命に関わるような重大な状況を引き起こしており、一刻も早く介入する必要があります。 |
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要介入 | 放置しておくと高齢者の心身の状況に重大な影響を生じるか、そうなる可能性が高い状態です。当事者の自覚の有無にかかわらず、専門職による介入が必要です。 |
要見守り・支援 | 高齢者の心身への影響は部分的であるか顕在化していない状態。介護の知識不足や介護負担が増加しているなどにより不適切なケアになっていたり、長年の生活習慣の中で生じた言動などが虐待に繋がりつつあると思われる場合などがあります。 |
引用元 東京都福祉保健局:虐待の程度
「緊急事態」「要介入」の場合、周りから見ても明らかな虐待と判断できる状態のことを指します。
この二つのレベルに到達すると、専門職による介入が必要な状態です。
「要見守り・支援」の場合は、虐待かどうかの判断に迷うことが多いです。
しかし、そのまま放置してしまうと深刻化することもあるため、高齢者やその家族の支援、介護サービスの見直しなどを図ることが大切でしょう。
高齢者虐待の原因
高齢者虐待は何か一つの原因があるわけではなく、様々な原因が重なり合って発生してしまうものです。
高齢者虐待を未然に防ぎ、また解決するためにも、根本にある原因を理解し状況を把握していくことが大切です。
高齢者虐待の原因は大きく分けて4つに分けることができます。
- 虐待者の原因
- 高齢者の原因
- 人間関係などの原因
- 社会環境などの原因
1.虐待者の原因
介護者の場合、介護ストレスが溜まり、虐待の原因となることがあります。
現在、在宅介護で限界を感じる人が多く、介護ストレスは一つの介護問題となってきています。
在宅介護が長期化してきている場合は、介護ストレスも溜まりやすく、他のご家族など周囲の配慮も必要となってくるでしょう。
また、虐待者が病気や精神的問題を抱えてる場合、高齢者虐待に繋がりやすくなってきます。
2.高齢者の原因
高齢者虐待と認知症には深い関わりがあります。
なんと虐待されている高齢者の約7割には、認知症の症状が見られるのです。
認知症の症状によって、言動がおかしくなってしまったり身体的自立度の低さが目立ってしまったりして、自分の要望をうまく伝えられないことが高齢者虐待の原因となることがあります。
またこのような認知症の症状そのものが、虐待者の介護ストレスの要因となってしまうこともあります。
3.人間関係などの原因
親の高齢化に伴い、ご家族での在宅介護が始まるのが一般的でしょう。
人によっては認知症なども発症してしまえば、生活支援だけではなく専門的な介護サポートも必要となってきます。
そのように今までとは違った生活が始まることで、家庭内における精神的・経済的なバランスが崩れてしまうことが高齢者虐待の原因となることもあります。
在宅介護が始まったことで、今まで表面化されなかった家庭内トラブルが現れ始めることも少なくはありません。
うまくいかない日々が続くということがストレスになってしまい、高齢者虐待につながることもあるんですね。
4.社会環境などの原因
周辺の社会環境が高齢者虐待の原因となっているケースもあります。
近年では、以前よりも近隣との付き合いが少なくなってきており、介護者が相談できる人が少ないだけではなく、高齢者虐待が表面化しづらくなっている面もあります。
また核家族化などが進み、他の家族や親戚などの介護への関心が低くなってきていることも高齢者虐待の要因です。
介護者が孤立してしまい、必然的に一人で介護を抱え込まなくてはいけなくなり、ストレスが溜まってしまうということです。
高齢者虐待の種類別!原因ランキング
高齢者虐待の原因を、虐待の種類ごとに表にまとめました。
一緒に確認していきましょう。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
身体的虐待 | 虐待者の介護疲れ(49.6%) | 虐待者の性格や人格(48.5%) | 高齢者本人の認知症による言動の混乱(46.5%) | 高齢者本人と虐待者の人間関係(42.0%) | 高齢者本人の性格や人格(36.0%) |
心理的虐待 | 虐待者の性格や人格(55.3%) | 高齢者本人と虐待者の人間関係(54.8%) | 高齢者本人の性格や人格(43.5%) | 虐待者の介護疲れ(38.3%) | 高齢者本人の認知症による言動の混乱(38.0%) |
経済的虐待 | 虐待者の性格や人格(64.0%) | 高齢者本人と虐待者の人間関係(55.5%) | 経済的困窮(47.9%) | 高齢者本人の性格や人格(39.6%) | 経済的利害関係(32.4%) |
介護・世話の 放棄・放任 |
高齢者本人と虐待者の人間関係(55.2%) | 虐待者の性格や人格(55.0%) | 高齢者本人の性格や人格(43.0%) | 配偶者や家族・親族の無関心(34.6%) | 高齢者本人の認知症による言動の混乱(33.0%) |
引用 東京都福祉保健局:虐待の発生に影響を与えたと思われる要因(ケアマネジャーによる回答)
高齢者虐待を防ぐためには
先ほども言いましたが、近年ではご近所付き合いが少なくなり、家庭内で起こる高齢者虐待が表面化しにくくなっています。
表面化しにくいということは早期発見が難しいということです。
そのため、高齢者虐待を未然に防ぐためには、ご近所同士で見守り会うことが大切なのです。
2006年4月からは、高齢者虐待防止法が試行されました。
この法律では高齢者虐待の防止が目的とされており、虐待と疑わしい行為を発見した場合は市区町村に通報することが義務付けられています。
「虐待かもしれない…」「このままでは深刻な状況になってしまう…」と虐待の恐れに気づいた時点で通報することが、防止・早期発見に繋がります。
しかし、高齢者虐待防止法が施行されても、高齢者虐待は年々増加傾向にあることが事実です。
そのため虐待防止に向けた取り組みは強化されており、2017年には以下の三つの柱が見直されました。
- 介護事業者向け
- 市町村職員向け
- 地域住民向け
1.介護事業者向け
介護施設では、介護スタッフだけの閉ざされた空間でもあり、虐待があってもその事実が表に出にくい可能性があります。
そのため、地域住民などの外部との交流を積極的に行ったり、地域支援事業の介護相談員派遣事業を活用したりすることで、「外部に開かれた施設」を実現するために見直されました。
また、施設長レベルなどの影響力のある職員を対象に、研修や教育を実施しています。
法制度・介護技術・認知症への理解、職員のストレス対策、虐待事案が発生した場合の迅速な報告体制の整備なども推進しています。
2.市町村職員向け
市町村職員に向けて都道府県側が法制度などの研修を実施しています。
また高齢者虐待を見つけた際に通報しやすい環境を作るため、都道府県や市町村のWebサイトを活用し、通報窓口の存在を広める活動もしています。
Webサイト以外でも、地域包括支援センターが発行する広報誌などを活用して、紙媒体での宣伝も検討されています。
3.地域住民向け
市町村職員向けの見直しを元に、地域住民への高齢者虐待の防止や通報窓口の周知が徹底され始めています。
以前より実施していた「地域住民向けのシンポジウム」の開催も行き続き行われており、高齢者虐待の理解を深め、第三者でも介入できる機会を増やしています。
高齢者虐待繋がりそうと感じたら…施設へ入居しよう!
在宅介護を行っていて限界を感じてしまうこともあるでしょう。
そのまま頑張りすぎてしまったら、高齢者虐待につながってしまうこともあります。
また、高齢者虐待では、自覚がなく虐待をしてしまうケースもあるのです。
現在の状況が高齢者虐待に繋がると、不安に感じた場合は、施設への入居を検討してみるのも良いでしょう。
長期間の入居ではなく、短期間の入居でも構いません。
少しでも介護から離れた時間を作ることで、気持ちがリセットされ、あなたにやさしい気持ちで要介護者と向き合うことができるでしょう。
ではここで、筆者がオススメする介護施設を3つ紹介します!
- 介護付き有料老人ホーム
- 特別養護老人ホーム(特養)
- ショートステイ
1.介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームには、要介護者と診断を受けた方だけが入れる「介護専用」と、自立をしている方と要介護の方が混在している「混在型」の2つの種類があります。
混在型では自立していることが前提とされる場合もありますので、ご本人の身体状況に合わせて施設を選ぶようにしましょう。
介護付き有料老人ホームで受けられるサービスは以下の通りです。
- 食事
- 入浴
- 掃除
- 排せつ
- リハビリテーション
- レクリエーション
基本的に施設スタッフは24時間常駐しておりますので、緊急時も安心して預けることができます。
2.特別養護老人ホーム(特養)
特養は、要介護認定を受けた65歳以上の高齢者が対象となっており、介護を受けながら生活することができます。
公的施設であるため、民間施設である介護付有料老人ホームに比べたら比較的安く利用することができます。
そのため入居待ちをしている人数が多く、申し込みをしてから入居するまでに時間がかかってしまうことがデメリットと言えるでしょう。
特養で受けられるサービスは以下の通りです。
- 食事
- 排せつ
- 入浴
- 緊急対応・健康管理
- リハビリテーション
- 生活支援
- 看取り
- レクリエーション
サービス内容は他の有料老人ホームと特に変わりはありません。
しかし、入居対象者が要介護3以上と決まっているので、申し込みをすれば誰でも入居できるわけではありません。
3.ショートステイ
ショートステイとは、短期間施設に入居し、長期的に入居している他の入居者と同じ介護サービスを受けることができるサービスです。
一般的に1~30日間の期間で宿泊利用することができます。
ショートステイで受けられるサービスは以下の通りです。
- 入浴
- 食事
- 排せつ
- 医師による健康管理
- 機能回復訓練
- 相談・助言
ショートステイには様々な種類があるので、ご本人の身体状況にあった施設を選ぶようにしましょう。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
高齢者虐待の種類については理解していただけたでしょうか?
高齢者虐待の要因ともなっていますが、近年では介護ストレスが問題視されています。
介護ストレスを抱えて体調を崩してしまう前に、そして虐待をしてしまう前に、ご家族などで介護のやり方について今一度話し合っておきましょう!
ご家族だけの介護で疲れが溜まっているのであれば、在宅介護サービスを利用してみるのはいかがでしょうか?
みなさんの一つ一つの行動で、高齢者虐待を減らしていけるようにしましょう!