ユマニチュードとは、フランス発症の認知症ケアです。
体育教師だったイヴ・ジネストさんとロゼット・マレスコッチさんが開発しました。
介護者がすべてやってあげるのでなく、本人の能力をできる限り使ってもらい、健康を維持・向上してもらうケア方法となっています。
介護職員向けのプログラムではありますが、きちんと手順を理解すればご家族でも行うことができるケアです。
そこで今回は、ユマニチュードについて詳しく解説していきたいと思います!
ユマニチュードの目標や基本、ステップについて説明していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください!
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ユマニチュードとは?
ユマニチュードは、フランス語で「人間らしさ」を指す言葉です。
知覚・感覚・言語といった人間が本来からもっているコミュニケーションに基づいた、認知症のケア方法になっています。
見る・話すなどの人間の特性に働きかけることによって、「あなたのことを大切に思っていますよ」とケアを必要としている方に働きかけることが大切なのです。
そうすることで、唯一無二の存在として尊厳を保つことができます。
ユマニチュードとは、介護が必要になった方の人間らしさを尊重し、コミュニケーションを通してそれを伝えるケアということですね。
相手に寄り添った話し方や触れ方が大切
認知症の方は、介護を拒否してしますことがよくあります。
認知機能が低下していると、介護の必要性を理解するのに時間がかかってしまうからです。
しかし、ユマニチュードでは認知症の方にしっかり届く話し方や触れ方を重要視しています。
このようなケア技術を身に着けることで、認知症の方と良好な関係を築きやすくなるのです。
信頼関係が築けていれば、「この人とはずっと一緒にいられる」といった感情記憶が残るようになり、少しずつですが介護を受け入れてもらえるようになります。
ユマニチュードの3つの目標とは?
ユマニチュードでは、ケアを行う人はプロとして定義されています。
ここでいうプロというのは、介護者の身体状態に合わせた正しい段階のケアを選択できる人です。
適切なケアを行うためには、現在行っている行動の目的を明確にし、相手の能力を活かすことが大切となってきます。
ユマニチュードの主な目標は以下の3つです。
- 心身の回復
- 機能維持
- 最期まで寄り添う
1.心身の回復
心身ともに、健康を回復させるための生活を心がけましょう。
もし認知症の方が寝たきりの場合、筋力の低下や床ずれなどの症状が発症してしまうことがあります。
少しでも立っている姿勢が保てるのであれば、立位で行えるケアは立ったままおこなうなど、心身の回復に繋がる生活を心がけましょう。
2.機能維持
できる限り、今ある機能を保つための生活を心がけることが必要です。
できるだけ車イスを使わずに歩くなど、少しでも身体機能を維持するための行動を生活の中に取り入れましょう。
3.最期まで寄り添う
自分らしく穏やかな最期を迎えるために、思いやりのあるケアを心がけましょう。
心身の回復や機能維持が難しくなっても、残り少ない力を奪わないようにして、ご本人の望む最期を迎えられるよう寄り添ってあげることが大切です。
ユマニチュードの4つの基本
ユマニチュードには、4つの基本があります。
以下の基本にもとづきケアを行うことが重要となってきます。
では具体的なケアの方法を、それぞれ確認していきましょう。
- 見る
- 話しかける
- 触れる
- 立つ
1.見る
認知症の介護において、「見る」という行為はとても重要です。
同じ高さの視線は相手に対等な関係性を伝えることができます。
そのため相手を「見ない」という行為は、相手の存在を否定することにも繋がりかねません。
同じ高さかつ正面から見つめることで、誠実さや愛情を伝えましょう。
この際、できる限り長く見つめることが大切です。
特にユマニチュードでは、0.5秒以上見つめ合うことが必要とされています。
2.話しかける
話すときは、ゆっくり落ち着いて話すように心がけましょう。
返事がなかったり、意識的な反応が見られなかったりする場合は、自分がしている動きを実況中継する「オートフィードバック」法を使うことが大切です。
オートフィードバック法とは、たとえば「右腕を少し上げますよ」「暖かいタオルで背中を上から拭きますよ」など、現在しているケアの内容を実況することです。
反応がなくても言葉を重ねることで、ケアを受けている方が自分の存在を再認識する大切な機会となります。
3.触れる
愛しい人に触れるように、優しく包み込むような動作で触れるようにしましょう。
柔らかくゆっくり触れることで、優しさや愛情を表現することができます。
指先で触れたり親指をかけて使ったりすることは、攻撃性や強制力を相手に感じさせてしまうため注意しましょう。
この際、肩や腕などの鈍感な部分から触れていくことも大切です。
いきなり、手や背中などの敏感な箇所を触ってしまうと、驚かせてしまう可能性があるからです。
4.立つ
座っている状態は、寝ている状態よりも空間を立体的に認知しやすくなります。
空間を立体的に認識することで、「自分はここに存在しているんだ!」といった近くをより強く持つことができるのです。
座っているだけではなく立ち上がることができれば、空間は縦方向にも広がるのでより存在している自覚を強く持つことができるでしょう。
また、立つことで軟骨や関節に栄養が行き渡りやすくなります。
循環系の機能が活発になり血流も良くなるので、筋力アップや骨粗しょう症の改善、床ずれの予防にも繋がるでしょう。
ユマニチュードにおける5つのステップ
ユマニチュードには、5つのステップがあります。
このステップに基づいてケアを行うことで、認知症の方により負担をかけないケアを提供することができます。
では、STEP1∼STEP5の手順を確認していきましょう!
- 出会いの準備
- ケアの準備
- 知覚の連結
- 感情の固定
- 再会の約束
STEP1:出会いの準備
「出会いの準備」というのは、来訪を伝えることです。
自宅用部屋の中にいる認知症の方に「誰かが会いに来た」ということを知らせ、受け入れるかどうかはご本人に選択してもらう形をとります。
どのように選択してもらおうかというと、まず室内にいる認知症の方に聞こえるよう永遠を3回ノックします。
その後3秒間待ち再び3回ノックして3秒待ちましょう。
もしそれでも反応がなければ、再び一回ノックして室内に入ります。
「3秒」といった時間を待つことで、本人の脳が活性化する基準を、少しずつですが高める効果が期待できます。
STEP2:ケアの準備
「ケアの準備」というのは、「一緒に楽しい時間を過ごすためにあなたに会いに来た」といったメッセージを伝え、関係性を築く段階のことです。
いきなり、これから行うケアの話をするのは避けましょう。
認知症の適切なケアを行うためには、ご本人と親しくなれるような言葉や態度をとることが大切です。
4つの基本で説明した通り、正面から近づいてしっかり目と目を合わせるようにしましょう。
ただし、じっと見つめているのではなく、目が合ってから3秒以内に話し始めることもポイントのひとつです。
相手と話す時はポジティブな言葉を並べるようにし、4つの基本をしっかり意識するようにしましょう。
そうすれば、必然的に良好な関係性を築きやすくなります。
万が一、3分以内にケアを行う了承が得られないようなら、その場は諦めるようにしましょう。
同意を得られないからといって、強制的にケアを行ってはいけません。
STEP2「ケアの準備」をしっかり行うことで、認知症特有の攻撃的な行動が約7割減少し、ケアに協力的になるといわれています。
STEP3:知覚の連結
「知覚の連結」とは、4つの基本のうち「見る」「話す」「触れる」の少なくとも2つ以上のコミュニケーションを同時に使いながら、「あなたは大切に思っている」といったメッセージを断続的に届けることです。
「優しく話しかけながら手を強く掴む」といった行動はメッセージに矛盾を生じさせます。
言葉や行動に一貫性を持たせながら接することが重要です。
認知症の方の五感に伝わるものが、ポジティブですべて同じ意味を持つようにしましょう。
STEP4:感情の固定
感情の記憶というのは、認知機能が低下してしまっても最後まで残ります。
たとえば、「誰かはわからないけど、その人に会ったときの感情は覚えている」ということです。
そのため、ケアを行った際に素敵な経験として感情記憶に残すことが大切なのです。
ケア終了後は「気持ちよかったですね」や協力してくれたことに対する感謝の気持ちを述べるようにしましょう。
ポジティブな気持ちを伝えることで、ご本人は「心地のいい時間を過ごせた」と感じることができます。
認知症の方は前回のケア内容を忘れていることが多いですが、「この人が優しい人か嫌な人かどうか」といった感情記憶は残っています。
気持ちよくケアを終えられたことをお互いに確認し合うことで、その次のケアをスムーズに進めることができるのです。
STEP5:再会の約束
認知症の方は、「またお会いしましょう」と次の約束をしても忘れてしまうことが多くあります。
しかし、STEP4:感情の固定で説明した通り、認知症の方でも感情記憶は残っています。
そのため、「楽しい時間を一緒に過ごせた人がまた会いに来てくれる」といった喜びや期待というのは感情記憶として残るのです。
認知症の方の視界に入る位置にメモ帳やホワイトボードなどを設置して、再会の約束を記録に残しておくことも有効な方法です。
メモを確認する度に、「優しい人が来る!」といった楽しみを繰り返し感じることができます。
再会を「感情」で約束することで、次回のケアの際笑顔で迎えてくれるようになるでしょう。
ユマニチュードは社交的な姿を取り戻す効果がある!
認知症の症状には暴言・暴力があり、攻撃的になってしまう方も少なくありません。
しかし、ユマニチュードのケアを受けることで攻撃的な症状は治まり、以前のような社交的な姿を取り戻すといった事例が多くあります。
なんと、暴言を繰り返していた認知症患者の方がユマニチュードのケアを受けたあと、介護者にピースサインをするほど態度が一変したという事例もあるのです。
介護者にとってのメリットも!
ユマニチュードは発祥地のフランスで高い効果をあげており、認知症患者の薬の服用量減少だけでなく、介護スタッフの離職率低下にも貢献しています。
暴言・暴力などの攻撃的な態度が減ることで、介護者の体力的・精神的負担も大きく軽減されたのです。
最初にも説明しましたが、認知症の方はケアを拒否してしまうことが多いです。
そのため、ご家族や介護スタッフの方がケアをするために、認知症の方と格闘するような場面も少なくありません。
素直に介護を受け入れてくれず、悩んでしまう介護者も多くいるのではないでしょうか。
ユマニチュードを取り入れることで、認知症の方は感情的に穏やかになっていきます。
感情が落ち着くことでケアを受け入れてくれるようになるので、ケアもスムーズに進み、介護者のストレスも軽減に繋がるのです。
ケアをする人・される人どちらもいい気持ちで介護生活を送れるということは、ユマニチュードの大きなメリットともいえますね。
まとめ∼ユマニチュードとは∼
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ユマニチュードについては理解していただけたでしょうか?
認知症の方・介護をする方、双方にメリットのあるケア方法ということがわかりましたね。
認知症の介護は、近しい人が行うほど限界を感じやすいです。
お互いに快適な介護生活を過ごすためにも、ぜひ今回の記事を参考にしてユマニチュードを取り入れてみてください!