65歳未満の方が発症する認知症を、若年性認知症といいます。
高齢者の認知症と大きな違いはありませんが、社会的役割を担っている年層が発症するため、ご家族や周りの人に大きな影響を与えてしまうといった特徴があります。
仕事などにも影響が出ると、経済的にも厳しくなってきますので、発症してしまってもリハビリなどで進行を遅らせることが大切かもしれませんね。
そこで今回は、若年性認知症について詳しく解説していきたいと思います!
若年性認知症の症状や原因、ご家族がとるべき行動なども説明していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください!
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若年性認知症とは?
若年性認知症とは、65歳未満が発症する認知症のことです。
年齢によって2つに区分されており、40歳∼64歳までに発症すると初老期認知症、18歳∼39歳までに発症した場合は若年期認知症と呼ばれています。
認知症=高齢者のイメージがあるからなのか、もの忘れなどの症状がでても認知症と疑わなかったり、うつ病や更年期障害と間違われたりすることがあります。
高齢者の認知症とどう違うの?
では、高齢者が発症する認知症と若年性認知症ではどう違うのでしょうか?
若年性認知症では、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の2つが圧倒的に多く、全体の6割を占めています。
高齢者の認知症ではアルツハイマー型認知症が約半数ですが、若年性認知症では脳血管性認知症の割合の方が多いです。
他にも若年性認知症には以下のような特徴があります。
- 発症する年齢が若い
- 男性が発症する割合が多い
- 体力がある
- 他の病気と勘違いして受診が遅れる
- 経済的負担が多くなってしまう
若年性認知症は男性で働き盛りの年齢層が発症することが多いので、高齢者よりも家族など周囲の人に大きな影響を与えてしまう傾向が高いです。
若年性認知症の症状とは?
若年性認知症の症状には一体どのようなものがあるのでしょうか?
主に以下の2つの症状がみられます。
- 中核症状
- 行動・心理症状(BPSD)
それぞれの症状の詳しい内容を確認していきましょう。
中核症状
中核症状には、以下の6つの障害・症状があります。
- 記憶障害
- 見当識障害
- 理解力・判断力の低下
- 実行機能障害
- 認識力の低下
- 幻視やパーキンソン病症状
1.記憶障害
記憶障害とは、直前の行動の記憶そのものがなくなってしまう、いわゆる「もの忘れ」です。
例えば、昨日したことなどを忘れてしまうなど、「思い出せない」というより「体験したこと自体忘れている」といった状態です。
記憶障害が進んでいけば、よく出かける場所でも迷子になってしまうこともあります。
2.見当識障害
見当識障害とは、「今日はいつ」「ここはどこ」などといったことがわからなくなってしまうことです。
また、家族などの近しい人物を別の人と間違えるなどといった症状も見られます。
3.理解力・判断力の低下
理解力・判断力が低下すると、簡単な計算ができなくなったり、自宅の場所がわかんなくなったり、信号のないところで道路を横断したりなどしてしまうようになります。
若年性認知症が進行すると、車が近付いてくることに気付かなかったり、踏切の遮断機が閉まり始めているのに気付かなかったりなど、臨機応変な対応ができなくまってしまいます。
4.実行機能障害
実行機能障害とは、計画して行動する能力が低下することです。
毎日同じものを作ったり、同じものを買ってきたりなど計画性がなくなってしまいます。
物事を進める手順もわからなくなってしまうので、いつも使っている電化製品や用具などの使い方もわからなくなってしまうのです。
意思表示も同じで、自分が伝えたいことに対してもうまく理論を縦て説明するということが難しくなってしまいます。
5.認識力の低下
認識力の低下とは、アルツハイマー型認知症でよく起きる症状です。
ドアが見えているのに、部屋からでられないといって部屋の中を歩き回るなどの症状がでます。
6.幻視やパーキンソン病症状
レビー小体型の若年性認知症では、高齢者と同じく幻視の症状が多く見られます。
何もないところに向かって話しかけたり怒ったりするため、精神疾患と間違われることも多くあります。
パーキンソン病に似た手が震える・動きが遅くなるなどの症状もでるでしょう。
行動・心理症状(BPSD)
行動・心理症状(BPSD)とは、中核症状によって日常生活を過ごしにくくなった場合に起こりうる二次的な症状のことです。
- 妄想・幻覚
- 不安・焦燥・抑うつ
- 徘徊
1.妄想・幻覚
認知症でよくみられる「物盗られ妄想」が起こる可能性があります。
大事なものをしまったがどこにしまったのか忘れてしまうこともありますが、しまったこと自体を忘れてしまうので「盗まれた!」といった妄想に繋がることがよくあります。
2.不安・焦燥・抑うつ
記憶がなくなる・物忘れをしていることに対して不安が募り、イライラしてしまうことがあります。
涙もろくなったり、消極的になったりなど感情にも変化が起きます。
3.徘徊
認知症で「徘徊」の症状はよく聞きますよね。
徘徊はただ歩いているわけではなく、本人はしっかり目的をもって歩いています。
しかし、昔を思い出して歩くなどの妄想や幻覚によって徘徊しているため、目的なくフラフラしているようにみえるのです。
たとえば、急に「家に帰る!」などと言って昔の家を思い出しながら帰ろうとし始めますが、実際にはすでに引っ越しているので目的地が見つからず徘徊してしまうといったことがあります。
家の中でも徘徊はおき、老人ホームへの入居や入院、リフォームなどの住居環境の変化でトイレなどの場所がわからなくなってしまい徘徊することもあります。
万が一本人に徘徊の症状が見られたら、なぜ外出したいのかを聞き、否定をしないことが大切です。
たとえば「買い物に行ってくる」などといって外出しそうになった場合は、「今日はもう遅いから明日にしましょう」といって引き止めたり、家の周りを一周したりなどの方法があります。
若年性認知症の原因とは?
若年性認知症になってしまう原因とは一体何なのでしょうか?
若年性認知症の原因には以下のような項目があげられます。
- アルコールの過剰摂取
- 高血圧
- 遺伝的要因
- 薬物乱用
- 生活習慣の乱れ
この要因が引き金となり、脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症を引き起こしてしまうのです。
脳血管性認知症
先ほども少し説明しましたが、脳血管性認知症は若年性認知症の中で最も多いです。
脳梗塞や脳出血の後遺症として発症する認知症なので、65歳未満の若い方でも発症してしまうのは納得できます。
アルコールの過剰摂取や過剰喫煙などは、脳梗塞などの原因となりますので、生活習慣を改めて原因となる病気から予防していくことが大切かもしれませんね。
日頃のストレスから逃れようとお酒やタバコに逃げてしまう方も少なくありません。
ストレスを抱えやすい現代人かもしれませんが、あまり抱え込まずにストレスフリーに生活することも必要かもしれませんね。
若年性認知症は早期発見・治療が大切
若年性認知症は診断までに時間がかかり、早期発見が難しいということが問題点として挙げられます。
育児・家事・仕事などで大変な年齢層の人がなりやすく、「やる気がない」「もの忘れがある」と気づいても日頃の疲れたと勘違いしやすいです。
年齢によっては更年期障害とも勘違いしてしまう方も多くいます。
特に若年性認知症の初期症状は、脳腫瘍・うつ病・更年期障害などと区別しにくく、診断に時間がかかってしまうのです。
「同じものを何度も買ってしまう」「仕事の段取りが遅くなった」「もの忘れしやすくなった」「失敗が増えた」「やる気が出ない」などと感じた場合は、まずは病院へ行くことをオススメします。
また、本人はそのような変化に気づきにくいこともあるので、ご家族や周りの方が少しでも異変を感じたら受診を勧めてあげるようにしましょう。
早い段階で医師に相談をしておくことで、診断までにかかる時間も短くなります。
結果、早めに治療をスタートすることができるので進行を遅らせたり、日常生活への改善を図ったりすることができるのです。
また、自分の病気を知っておくことで日常生活や仕事へ支障が出ないよう準備をすることもできます。
家族が若年性認知症になったらとるべき5つの行動!
万が一、ご家族の一員が若年性認知症と診断されたらどうすればいいのでしょうか?
ここでは、ご家族の対応の仕方について解説していきます。
- ご家族がしっかりサポートしよう!
- 地域包括支援センターに相談しよう!
- 免許を返納しよう!
- 本人の話を否定しない!
- 強制はしない!
1.ご家族がしっかりサポートしよう!
もし認知症であると診断されてしまったら、告知時から家族がしっかりとサポートしてあげるようにしましょう。
本人に認知症であるかどうか告知するというのは、よく悩まれているポイントです。
仕事などの社会的役割へ支障が出ていない段階で認知症だと告知をされてしまえば、精神的ショックを大きく、元々うつ傾向が大きい人はそれが悪化してしまうこともあるのです。
しかし、理解力・判断力が残っている段階で告知を受ければ、ご本人の希望に沿った治療を行えるといったメリットもあります。
ご本人が意思表示をしっかりできる段階で治療法を確認しておくことはとても大切なことなので、ご本人に認知症であることを告知するというのは必要なことなのかもしれません。
精神的ショックをなるべく与えないためにも、ご家族がしっかりとサポートしてあげるようにしましょう。
2.地域包括支援センターに相談しよう!
若年性認知症は、働き盛りの年齢層に発症することが多いです。
そのため、家計を支えている人が認知症になったら、経済的にも大きな負担を強いられます。
家庭内の収入の減少・配偶者の介護と仕事の両立など、家庭的にもかなり大変な時期に突入するでしょう。
そんなとき、「どこに相談すればいいのかわからない…」と頭を抱えてしまう方が多くいます。
まずは地域包括支援センターに相談をしましょう。
相談に乗ってくれるだけではなく、さまざまな情報なども提供してくれるのでオススメです。
3.免許を返納しよう!
若年性認知症と診断されたら、できれば免許は返納した方が良いでしょう。
若年性認知症になってしまったら、判断力が鈍るので運転をするにはとても危険な状態になります。
逆走してしまったり、アクセルとブレーキを踏み間違えてしまったりなど、他者を巻き込みかねない事故にもつながる危険性があります。
ご本人に免許の返納を納得してもらえる場合は、返納をするようにしましょう。
しかし、車移動が多かった人だと返納に対して納得してもらえない場合もあります。
その場合は、主治医や警察に相談してください。
道路交通法では認知症と診断された場合、免許は停止になります。
免許の返納をしてほしい場合は、その点や危険性などもしっかり伝えて納得してもらえるようにしましょう。
4.本人の話を否定しない!
ご本人の話を否定するというのはよくありません。
若年性認知症になると物盗られ妄想が増えてしまいますが、実際に盗まれているわけではないのでご家族は否定しがちになってしまいます。
しかし本人は実際になくなったと思っているので嘘を言っているわけではありません。
幻覚も同じで実際に見えているので、否定はしないようにしましょう。
何度も同じことを言われイライラしてしまうこともあるかもしれませんが、話を否定せずに寄り添ってあげることが大切です。
5.強制はしない!
若年性認知症になると、今まで普通にできていたことができなくなってしまいます。
そうすると、ご本人もご家族もどうしてもできないことに目が向きがちになってしまいます。
しかし、日常生活に関わるすべてのことができなくなるわけではないので、できることをひとつひとつ着実にこなしていけるようにしましょう。
サポートしようとしても「介護なんていらない!」と介護拒否をされてしまうこともあるかもしれませんが、ここで介護を強制してしまうと余計興奮してしまうこともあるので注意してください。
若年性認知症に必要なケアとは?
若年性認知症にはどのようなケアが必要なのでしょうか?
それぞれ確認していきましょう。
- 適度なリハビリテーション
- 初期段階のもの忘れに対する工夫
- 迷子対策
適度なリハビリテーション
若年性認知症に適度のリハビリテーションはとても有効です。
リハビリは脳に刺激を与え活性化させてくれるので、若年性認知症の進行を遅らせることができます。
リハビリは体操などのイメージがありますが、身体を動かすだけではありません。
音楽を歌ったり聞いたり、昔の話などを思い出しながら人に話したり、音読をしたり簡単な計算などもリハビリの一環となります。
また、趣味などがある場合はそちらを継続するのも良いでしょう。
大切なのは、本人に強制をさせないということです。
初期段階のもの忘れに対する工夫
カレンダーは大きめのものを用意して予定を書き込めるようにしておきましょう。
メモ帳などを近くに置いておき、常にメモできる状態を作っておくことも大切です。
薬を服用している人は、一回分の薬を小袋にまとめておきカレンダーなどに貼っておくことで、飲み忘れを防ぐことができます。
迷子対策
若年性認知症の初期段階でも、住み慣れた地域で迷子になってしまう可能性があります。
若年性認知症が進行して「徘徊」となってしまうと、誰かに保護されても連絡先がいえないということもあるのです。
その対策として、服の裏やカバンの中には連絡先を書いたメモなどを入れておくようにしましょう。
GPSをもたせておくのもひとつの手かもしれません。
まとめ∼若年性認知症の症状∼
最後まで読んでいただきありがとうございます。
若年性認知症については理解していただけたでしょうか?
若い年齢層に発症するというだけで、進行していけば高齢者の認知症とほぼ変わらない症状がでてきます。
社会的役割を担っている方だと若年性認知症と診断され強いショックを感じることがあるかもしれませんが、自分の症状を理解しておくことで生活しやすくなることもありますよ。
また、リハビリテーシを適度に行うことで、認知症の進行を遅らせることもできます。
若年性認知症でも仕事や今までの生活が続けられるよう、ご家族がしっかりサポートしていきましょう。