胃ろうとは、胃に穴をあけてカテーテルを通す処置のことです。
主に、自分の力で食事をとることができなくなった方が行い、カテーテルを通して直接栄養剤を注入します。
比較的簡単な手術で処置を受けることができるので、使用している方も多くいます。
しかし、人によっては「医療行為」ではなく単なる「延命処置」だといった批判の声もあり、利用者は減少傾向にあるのが実際のところです。
では、胃ろうのメリット・デメリットというのはどのような部分なのでしょうか?
メリット・デメリットをしっかり理解しておくことで、いざという時の選択肢として胃ろうを視野に入れておくことができますよ。
胃ろうの方を介護するときの注意点なども詳しく説明していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください!
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胃ろうとは?
胃ろうとは、胃に小さな穴を開けてカテーテルを通し栄養剤を注入していく栄養補給方法です。
胃ろうを始める際はPEG といった内視鏡を使う手術を行わなければいけませんが、15分から30分程度で終わる短い手術です。
胃ろうの主な目的は身体に負担をかけずに栄養補給をすることです。
認知症が進行してしまい自分の力で口から食事をとることが難しい人や、嚥下障害によって誤嚥性肺炎を引き起こす可能性が高い人などが多く利用しています。
胃ろう以外にも、鼻から胃までカテーテルを通す経鼻胃管栄養や血管に直接栄養成分を注入する経静脈栄養などの栄養補給方法もあります。
胃ろうって延命治療なの?
近年では「胃ろうって延命治療なの?」といった疑問の声もあがっています。
胃ろうは「医療行為」ではなく「延命治療」の一環とみなされ、行うべきではないという考え方を持つ方も多くいるからです。
胃瘻が延命治療として考えられている理由として、本人が判断できなかったり理解できなかったりする状態で行われることが多いという点があげられます。
しかし、身体状況が良くなった際に自分の力で口から食べられるようになるまで栄養面のサポートを行うというのが本来の胃ろうの目的です。
実際にこの本来の目的で使われていることも多く、本人が将来的に自分の力で食事ができるようになれば延命治療であるとは言えませんよね。
だからといって回復しなかった際も、無意味な延命治療だったとは一概には言えません。
人によって考え方がそれぞれで、医療に関することなので社会からの見え方もあり定義するのが難しいというのが実際のところでもあるのかもしれません。
しかしその一方で、本人と意思の疎通が出来なくなって回復の見込みも一切ない場合に、家族側も「もう楽にしてあげたい」という考えでまとまっていても、胃ろうをしていることで最後が迎えられないというケースがあるのも事実です。
このような状況に対して、日本老年医学会は「本人の尊厳を損なう恐れがある」として終末期における胃ろうに関しては、慎重に判断していかなければならないといった内容を表明していまwす。
胃ろうを始めるパターンによっても考え方が変わってくるでしょう。
認知症または老衰によって食事がとれないケース
80歳以上の場合だと、認知症または老衰によって食事が取れなくなり胃ろうを始めるケースが多いでしょう。
この場合、単なる延命治療と考えられやすいことが多いです。
食事が取れない原因として肺炎・心不全・脱水などの症状があれば治療を行い、それでも回復が見込めない場合胃ろうを勧められます。
しかし、原因疾患がなくて食事が取れないのであれば、生きてく上で限界を迎えている可能性が高いです。
そのような状態で胃ろうをしてしまうと、単なる延命治療となってしまいます。
胃ろうの4つのメリット
胃ろうには以下の4つのメリットがあります。
それぞれの内容を確認して行きましょう。
- 本人・介護者の負担が少ない
- 口から食事ができる
- カテーテルが抜けにくい
- お風呂に入れる
1.本人・介護者の負担が少ない
先ほど紹介した経鼻胃ろう栄養は鼻から喉にかけてカテーテルを通しているので、ご本人が痛みや不快感を感じやすい方法です。
一方で胃ろうは、見た目からもカテーテルを通していることが分かりにくく痛みや不快感もありません。
ご本人の体への負担・痛みが少ないというのは、とても嬉しいメリットではないでしょうか。
また、カテーテルを通して栄養剤を注入することになるので食事介助にかかる時間や手間も少なくなります。
そのため、介護者側の負担も軽減されるということもメリットのひとつです。
2.口から食事ができる
胃ろうは、経鼻胃管栄養のように食道にカテーテルが通っているわけではないので、いつでも口から食べ物を食べる練習をすることができます。
胃ろうにしたからといって、今後自分の力で食事をすることを諦めたというわけではないので、治療を進めながらもリハビリに臨めるのは嬉しいことですよね。
3.カテーテルが抜けにくい
胃ろうは、カテーテルが抜けにくく、本人が抜いてしまう心配も低いです。
鼻から喉を通してカテーテルを入れると、どうしても不快感が強くなってしまい患者さんの中には自力でカテーテルを抜いてしまう方もいます。
しかし、胃ろうは不快感がないのでそのような心配がなく、ご家族も安心して見守ることができるでしょう。
4.お風呂に入れる
カテーテルを通していると、入浴の際には保護が必要になり、入浴にとても手間がかかってしまうことがあります。
しかし、胃ろうだと特にカテーテルを保護せなくても入浴することができるので、日常生活に不便を感じないでしょう。
また、服を着てしまえばカテーテルは簡単に隠れてしまうので外出もしやすいです。
胃ろうの5つのデメリット
メリットがある一方で、胃ろうには以下の5つのデメリットもあります。
それぞれの内容を確認しておきましょう。
- 手術が必要になる
- 唾液による誤嚥性肺炎の危険性がある
- 逆流の危険性がある
- 老人ホームに入居できないこともある
- 痰を自力で吐き出せない
1.手術が必要になる
胃ろうを利用するにあたって、手術が必要となってきます。
15分∼30分程度で終わる手術と説明しましたが、「手術」となってしまうと恐怖を感じてしまいますよね。
また、人によっては胃に穴を開けるということに抵抗を感じる方もいらっしゃいます。
いくら治療とはいえ、恐怖を感じながら行うというのはあまり前向きになれません。
2.唾液による誤嚥性肺炎の危険性がある
胃ろうと始めるとなったら、誤嚥性肺炎のリスクが低くなると説明されることがあるでしょう。
しかし、誤嚥が起きるのは食べ物だけではありません。
寝ている間などに唾液を誤嚥してしまい、誤嚥性肺炎を発症してしまうこともあるのです。
胃ろうを始めると口から食事をしなくなるので口腔ケアをどうしても怠ってしまいます。
口腔ケアを怠ると細菌が増え、唾液を誤嚥した際に誤嚥性肺炎を発症してしまう原因となってしまうのです。
3.栄養剤が逆流する可能性がある
栄養剤が逆流してしまう危険性があります。
胃ろうで使われている栄養剤は液状になっているので逆流しやすく、胃に注入された後誤嚥することがあります。
逆流を防ぐために、注入中と注入後は上体を30度以上起き上がらせた状態、または座った状態を保っておくようにしましょう。
4.老人ホームに入居できないこともある
胃ろうを利用していることで、老人ホームに入居できない場合があります。
2012年から研修を受けている介護スタッフであれば、胃ろうの対応をできるようになり、以前よりも胃ろう患者を受け入れる老人ホームが増えてきています。
しかし、徐々に増えているので、すべての老人ホームが胃ろう患者を受け入れてくれるわけではありません。
老人ホームへの入居を検討している方は、胃ろうを使用している旨をしっかりと伝え、入居後は支障なく暮らせるのかどうかきちんと確認しておくようにしましょう。
5.痰を自力で吐き出せない
胃ろうを使っているということは、嚥下機能が低下していることも多く、痰を自力で吐き出せないという人も多いです。
痰をはじめとする、口の中の分泌物を自力で吐き出せない時は周りの人に取り出してもらう必要があります。
老人ホームや病院の場合だと、施設スタッフによって専用の器具で吸い取ってもらうことになるでしょう。
痰を吐き出さずそのまま放置してしまうと誤嚥性肺炎になりかねません。
老人ホームへの入居を検討している方は、そのような対応もしっかり取ってもらえるのか確認する必要があるでしょう。
胃ろうの方を介護するときの注意点5つ
胃ろうの方を会議するときの注意点は、以下の5つあります。
- 口腔ケアを徹底する
- 栄養剤は本人の身体状態に合わせる
- 衛生管理
- 身体状態を観察する
- 身体はしっかり起こす
1.口腔ケアを徹底する
口腔ケアを徹底しましょう。
先ほども説明した通り、胃ろうを始めると口腔ケアがどうしても怠りがちになってしまいます。
しかし、唾液による誤嚥性肺炎の発症の可能性もあるので、口腔ケアは継続してしっかりと行うようにしましょう。
2.栄養剤は身体状況に合わせて選ぶ
胃ろうに使用する栄養剤は身体状況に合わせて選ぶようにしましょう。
人それぞれの体質によって、胃に入ったものが逆流しやすい「胃食道逆流症」といった症状がでている方も多くいます。
そのような人に対しては、とろみの付いた半固形化栄養栄養剤といった栄養剤を使用することで、逆流の症状を抑えれるかもしれません。
体調をしっかり観察して、その時に合った栄養剤を選ぶようにしましょう。
3.衛生管理
胃ろうや栄養剤の衛生管理も大切です。
胃ろうに関する道具は、使うたびにしっかり洗浄し乾燥させ、雑菌やほこりなどの汚れがつかない場所に保管しておくようにしましょう。
また、栄養剤は高カロリーなので雑菌が繁殖してしまう可能性もあります。
これも清潔な場所に保管するようにしましょう。
4.身体状況を確認する
カテーテルというのは身体にとっては「異物」です。
その異物を胃に穴を開けて差し込んでいるので、人によっては拒否反応が出てしまうこともあるでしょう。
よくあるトラブルとしては、皮膚が赤くなったり、一部は腫れ上がったりしてしまう症状です。
悪化してしまうと膿が出ることもあります。
胃ろうを管理することになるご家族や介護スタッフは、そのようなトラブルが起きていないか随時確認する必要があります。
皮膚とカテーテルとの摩擦を避けることが大切でしょう。
必要があれば主治医に相談をし、塗り薬などの指示をもらうようにしてください。
トラブルが起きた際はひどくなるまえに対処をし、ご本人の負担をできるだけ少なく済ませてあげましょう。
5.身体はしっかり起こす
胃ろうの最中は、上体を起こして姿勢を正してあげることが大切です。
姿勢が悪いまま栄養剤を注入してしまうと、逆流させてしまうことがあるためしっかりと注意する必要があります。
姿勢が悪いと、食べたものを逆流させてしまうこともあるため、本人が要介護状態のときは、介護者がしっかりと気をつける必要があります。
栄養剤を注入するときは、液体を一気に飲もうとするのと似た状態になっています。
そのためその時と同様に、栄養剤を注入するときは30度∼45度以上、上体を起こしてあげるようにしましょう。
ただ、同じ姿勢をずっと続けるのが難しい人もいますので、「絶対に30度∼45度以上!」というわけでなく、ご本人に苦痛を与えないことを優先して考えることが大切です。
胃ろうと認知症
認知症の方に行う胃ろうは、大変なケースがあります。
胃ろうを行っている間は、ベッドの上で安静にしてなければいけません。
しかし、認知症が進行していると多動の症状が出てしまい、落ち着きがなくなってしまうことがあります。
そうなると、問題なく栄養剤が注入されたかどうか確認することが難しくなり、逆流の危険性も高まってしまうのです。
また、認知症が進行しているとご本人が胃ろうに対する認識をきちんと持てなく、自身でカテーテルを抜こうとしてしまうことがあります。
カテーテルを自分で脱いでしまったら、手術によって開けた穴が塞がってしまうこともあり今後の胃ろうに影響してしまうこともあるでしょう。
万が一カテーテルを抜いてしまった時に備えて、替えのカテーテルを用意しておいたり、すぐに受診できる医療機関の情報を集めて置いたりすることも大切です。
まずは手術によって開けた穴が塞がらないようにして、栄養剤がこぼれないように対処しましょう。
胃ろうのまとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
胃ろうについては理解していただけたでしょうか?
メリットもデメリットもそれぞれある行為なので、ご本人やご家族がしっかりと話し合って利用するかどうかを決めることが大切ですね。
ご本人の意思がしっかりと確認できる元気なうちに話し合っておくようにしましょう。